ラブカは静かに弓を持つ 安壇 美緒著
この本も，いつものFMココロの番組でオススメされていた書籍。
図書館で予約をしてから結構長く待ったと思ったら，それもそのはず【第6回未来屋小説大賞受賞】【第25回大藪春彦賞受賞】【第20回本屋大賞第2位】など数々の賞を受賞した人気作品のようです。
音楽の著作権を管理する団体に勤める主人公。
子どもの頃にチェロを習っていたことを理由に，上司から音楽教室にチェロを習いに行き著作権を侵害している証拠を集める，スパイ行為を求められる。
子どものときにチェロを習った帰り道、誘拐されそうになった過去のトラウマから不眠症に悩み，人間関係にも消極的な主人公は気が進まないままチェロ教室に通い始めるが，講師との出会い，講師の生徒との交流，そしてチェロの音色に癒されて不眠からも解放されていく。
しかし，師や仲間との楽しい時間，チェロを奏でる喜びに満たされるなかでスパイであることへの葛藤に苛まされる。
というあらすじ。
ラブカというのは，深海に生息する鮫の一種で、主人公が講師から練習曲に指定された「戦慄きのラブカ」という曲，同名の映画の主題曲から由来する。
その映画では，深海に住むラブカをスパイの象徴としてあつかい、また音楽教室にスパイとして潜り込んだ主人公の象徴でもある。
チェロという，一般人にはあまり馴染みのない楽器が主軸なのでストーリーについていけるかどうか心配でしたが，まったくの杞憂に終わりました。
少年時代の，チェロを辞めるきっかけになった誘拐未遂事件のトラウマから，不眠症に悩みつつすこし内向的な主人公が，チェロの師や良き仲間たちと出会い，チェロの音色に癒され成長していく過程に感情移入していると，業務命令とはいえスパイとして音楽教室に通っている罪悪感，そして，バレるのではないかというドキドキ感。
読んでいてスリル満点，読み応えあり。
