ワタクシが大好きだったラジオ番組、サントリー サタディウェイティングバーにたびたび出演されてさまざまな本を紹介してくれた書評家の目黒 考二氏が、そのサタディウェイティングバー番組内でおすすめされていた書籍。
ディック・フランシスといえば競馬を舞台にしたミステリーの大家でたくさんの作品を残されています。
かなり昔、それこそ小学生の高学年か、あるいは中学生の頃か、作品名も内容も覚えていませんが、ディック・フランシスの著作を読んだことはあるのですが今回40年ぶりくらいに読んでみることになりました。
この「本命」という作品は、20年近く前に刊行された「ミステリの名書き出し100選」(この本も読んでみたかったのですが当然絶盤で図書館には蔵書がなく、amazonではプレミア価格)に目黒氏自身が紹介していたということをお話しされていたのです。
自身が騎手をしていたという経歴から、競馬を題材にしたミステリを多数書き残したディック・フランシスですが競馬の騎乗シーンを描いた数少ない作品がデビュー作である「本命」だということ。
幸い図書館に蔵書があったので借りて読むことができました。
1976年刊行なのでもう50年近くもまえに書かれた作品。
たまたま借りた書籍が古めかしい「ハヤカワポケットミステリ版」だったこともあいまって、描かれる街の風景、クルマなどなどいささか古めかしい感じは否めない。
しかし冒頭の騎乗シーンのスリリングな展開に手に汗握り、主人公アラン・ヨークが冒頭で亡くなった親友の死の原因に陰謀の気配を嗅ぎとって、八百長レースが行われていること、背後に蠢く悪の組織、首謀者を突き止めていく過程で自身も罠に嵌められ瀕死の重傷を負ってしまう。
怪我を乗り越え、勇気を振り絞って悪に立ち向かう主人公にすっかり肩入れしてしまいました。
そして、古めかしいと感じたハヤカワポケットミステリ版ですが、これがすっぽりと手に馴染んでたいへん読みやすい。
菊池 光氏の訳も相変わらず素晴らしい。
好きなミステリ作品をポケットミステリ版で読み直してみるのも一興かと思いました。