スキーブーツには前傾角度がつけられていて,ほとんどのブーツには角度を大きくしたり小さくする調整ができるように設計されています。
この,スキーブーツの前傾角度,なんとなく滑って調子が良いとか悪いとかで試して決めるのも難しいもの。
具体的に使用するスキーヤーにとって適切なスキーブーツの前傾角度の調べかたがないものかと疑問に思っていたら,日本語に訳する手段を見つけてようやく内容を理解することができた「アルティメットスキーイング」のなかに記されていました。
曰く,「ブーツのバックルを滑る時と同様にしっかりと締め,硬くて平らな床の上に立ちます。
そして,両手を肩の高さにしっかり前に出してしゃがみ込みます。そして,後方にバランスを崩すまでにどれだけ低くしゃがむことができるかを確認します。
このとき,大腿骨が地面と並行になるまでしゃがみ込んでも前後のバランスが保たれていればそのスキーブーツの前傾角度がスキーヤーに合っているということ。
もし、そこまで低くできないのであれば、ブーツはもっと前傾している必要があります。ブーツの前傾角度が十分でないと低い姿勢でバランスを取ることはできません。
もしそれよりもずっと低くできるのであれば、本当に必要以上に傾いている可能性があります。」ということ。
ワタクシが昨シーズン使ったテクニカファイヤーバードを履いて実験してみると,無事に大腿骨が地面(部屋の中なので床面といった方が正解か)になるまでしゃがみ込んでも後方にバランスを崩すことはなかったので適切な前傾角度のセッティングができていたようです。
この,スキーブーツの前傾角度は使う人の技術レベルではなく身体的な特徴によって決められるべきもの。
よくあるのはふくらはぎが太いと下肢が前に傾き(前傾角度が強くなり),細いとまっすぐに立ちます。(前傾角度が緩くなる)
大腿骨が長いと重心が後方に傾きやすくなり,胴体が長いと重心が前に行きやすくなります。
これらの身体的特徴を踏まえた上でスキーブーツの前傾角度を調整し,適切なセッティングを施す必要があります。
コブ斜面にあまり入らない人やソフトなブーツで滑る人は上記のテストより前傾角が小さくても大丈夫かもしれない。
深いコブを滑る人や硬いブーツを使う人は上記のテストより前傾角をさらに大きくした方がよいかもしれない。
この,ブーツの前傾角度というものはスキーブーツによって足首の可動が制限されることを補うものだそうです。
つまりはスキーで滑走するときに足首が使いやすい角度という認識で良いのかもしれません。
逆に言えばショップで良くみられる光景としてスキーブーツを試着して膝を前に突き出して足首をグイグイ曲げてブーツが柔らかいの,硬いのと言っていますがそういう使い方をするものではないということ。
前傾角度の調整方法としては,一番簡単なのはほとんどのブーツに付属しているリヤスポイラー(インナーブーツの後ろ側にベルクロで貼りつけるタイプのものが主流)をつけたり外したりすること。
スポイラーを付けると前傾角度が大きくなり,はずすと前傾角度が小さくなります。
なかにはふくらはぎの筋肉が発達していてなおかつ位置が低い人はリヤスポイラーを外したスキーブーツでもインナーブーツの上側に押されて前傾角度が強くなりすぎるケースもあるようです。
その場合は,アッパーシェルの短い(高さの低い)ショートカフモデルのブーツに替えるか、インナーブーツの後ろ側を肉抜きするなどの対処が必要になりますね。
しかし,ある程度以上の身長がある(170cmくらいが目安か)ニンゲンがショートカフのスキーブーツを履いてしまうといざという時にスキーの抑えが効かず困ってしまうので要注意。