ヨーロッパ食堂旅行 野地秩嘉著
ノンフィクション作家 野地秩嘉氏によるヨーロッパの食堂と旅のエッセイ。
歴史のあるビストロやトラットリアの名物料理に古代の遺跡の町で再現されたワインの話題など、美味しそうな「食」に関するお話が楽しめるのはもちろん、老舗野レストランのホスピタリティについても触れられています。
たとえば、あるパリのビストロでは、昔テーブルクロスに紙を使っていて、店で一番安い定食を食べたアメリカ人の若いカップルが「新婚旅行でパリに来ました。ここの食事は私たちが食べた中で一番美味しかった。」という短い手紙が書かれていた。
店のオーナーはその手紙を嬉しく思い、その手紙をアルバムに挟んでおいた。
20数年後、アメリカ人の四人家族が来店してシャトーブリアンを食べ、シャンパンを何本も開けた。
そして支払いの時にオーナーに、新婚旅行でこの店に来たことがあるというので、手紙のことを思い出して見せてみたらやはりそのカップルたちだったというエピソードが特に印象深かった。
さらりとした文体でさまざまなエピソードが記されていますがとても味わい深いエッセイ集でした。